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    北方謙三の歴史小説『水滸伝』

     ハードボイルド作家というと、若い頃、大藪春彦を読み漁ったものです。彼は人間の心理を描くというよりも壮絶なバイオレンス・アクション小説を得意としてて、銃やら車がやたら登場するんですな。物語が単純で結構スカッとするんで読み流すには持って来いでした。

    ところが一方で、北方謙三と云う人もテレビには良く出演し、渋い感じのハードボイルド親父感が気にはなっておりました。しかし大藪で堪能していたものだから、彼の著書は手にしなかったのです。

     それから時は流れ、中国の歴史に興味を覚えた頃、人物名が皆、同じようで覚えられない。はて、どうしようかってなった時、登場人物が山のように出てくる『水滸伝』を読んでみようかと。そしてあの北方謙三の『水滸伝』に出会ったのです。

    彼の『水滸伝』は、それぞれの人物が彼独自の解釈でもって個性的に生々しく描かれておるんですよ。名前なんてすぐ覚えられました、字名まであったにも拘らず。

    51NHYAeq8kL__SS500__convert_20110906100650.jpg 「水滸伝」は伝奇歴史小説の大作、「中国四大奇書」の一つで、北宋末期の汚職官吏や不正がはびこる世の中、それぞれの事情を持った英雄が梁山泊という要塞に集まり、宋に反旗を翻すという話です。

     もっとも「水滸伝」は実話ではありませんが、歴史書『宋史』には、徽宗期の12世紀初めに宋江を首領とする三十六人が実在の梁山泊の近辺で反乱を起こしたことが記録されているそうです。

     これを元に、いわゆる「北方水滸伝」が全19巻に別巻2冊の超大作に書き上げられました。原典はたくさんの伝承・伝説・民話のようなものを寄せ集めて物語が出来上がっています。これは一人の作者が書いたものではないからで、時制が統一されていないのです。だから小説としては物足りない、と北方謙三氏は言っています。

     さらに、原典「水滸伝」が物足りない最大の理由、それはそれまで叛徒・賊軍であったはずの梁山泊の面々が、敵対していた宋に降伏し赦されて官軍になってしまう。つまり、彼らには「叛乱の意志」が貫かれていないのです。ここが原典の最大の欠点、カルタシスを欠くとおっしゃる。ハードボイルド作家としては許せないところなのでしょうね。

     ところでキューバ革命、「革命を志す一部隊が、夜中、密かにキューバ島に上陸し、ジャングルの中に拠点を築いて革命政権を樹立した」という。北方氏はこのキューバ革命を意識しながら「水滸伝」を書いたと、『北方謙三の水滸伝ノート』で言っています。つまり、「北方水滸伝」は革命的な英雄・豪傑達の姿をそれぞれ、生き生きとして描いたものなんですね。

     年齢を重ねての初めて読む水滸伝は、恥ずかしながら血沸き肉躍るほど面白いかったですわ。108人の「魔星の生まれ変わり」が登場する。毎回、飽きない。一挙に、北方謙三氏のファンになってしまいました。


    そのうち『北方三国志』、『楊家将』、『血涙』、『楊令伝』など書き連ねたいと思っています。今日はこの辺で。



    テーマ : 読書感想
    ジャンル : 小説・文学

    tag : 北方謙三 水滸伝

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    大藪春彦に反応

    大藪春彦は何冊か読んだ。銃や車等小道具の名前や特徴が記憶に残った。平井和正が傾倒していたから読んでみたんだけどね(^^;

    Re: 大藪春彦に反応

    > 大藪春彦は何冊か読んだ。銃や車等小道具の名前や特徴が記憶に残った。平井和正が傾倒していたから読んでみたんだけどね(^^;
    ワルサ-P38とかコルト45とか懐かしいなあv-290
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